秋田内陸縦貫鉄道沿線地域の魅力ある情報をみなさまへお届けいたします
 

新着情報

 
 

四季の風景

< 春 >

秋田内陸線の春は、雪どけから始まる。

線路を覆っていた根雪がとけて、バラストや枕木が久しぶりに姿を現す。列車が走る音も、雪の消音器がなくなったので、「コトン、コトン」という音色から「タタン、タタン」という響きに代わる。これが春の音だ。

標高の低い鷹巣や角館あたりでは3月中に田んぼの雪が消えることが多いのだが、山間部では4月末まで雪が残ることもある。だから、内陸線の旅は、季節のタイムスリップを味わう旅になる。雪の消えた田んぼでは、北へ帰る間際のハクチョウが栄養補給をしている。

角館の桜の見ごろは4月下旬から5月上旬。ちょうどゴールデンウィークの頃だ。一方、最近観光客が増えてきた「八津のカタクリ群生地」は、角館の桜よりも少し早く咲き始める。こちらは麓から山腹へと順番に咲いていくので、桜よりも花の期間が長い。

角館のシダレザクラやソメイヨシノが葉桜になる頃、内陸線沿線の山の桜、ヤマザクラが咲き始める。こちらは自生の桜で、木々の芽吹きが始まる頃に、赤味の強い花が山腹のあちこちを彩る。車窓からヤマザクラを探していると、旅の時間がすぐに経ってしまう。

ゴールデンウィークが終わると、観光客の数はずっと少なくなるのだけれど、実は内陸線の車窓がすばらしいのは、ここから。山の芽吹きと新緑、そして水の張られた田んぼと集落の、春本番が始まるのだ。5月中旬から下旬の里山風景は、天下一品である。

6月に入ると、森吉山のゴンドラが動き出す。高山植物たちが、山の雪どけを待って花を咲かせはじめるのだ。森吉山麓の安の滝、桃洞の滝などのハイキングコースも人々を迎え入れてくれる。里の季節は春から初夏へと移って行く。

< 夏 >

アユ釣りの解禁で、内陸線の夏が始まる。内陸線は北部が阿仁川、南部が桧木内川に沿って走るので、7月1日の解禁からは清流にたたずむたくさんの釣り人を見ることができる。

清流の源の山は、深い緑に包まれている。内陸線の列車は、一つ一つ駅に停まりながら、山の奥へ奥へと入っていく。森が雨に打たれる日など、初めて乗った観光客が、「この列車、どこまで奥に入っていくのだろう」と心配になるほどだ。

夏は東北の祭りの季節。8月上旬には秋田の竿灯、青森のねぶたを始めとして、全国から観光客が集まってくる。その観光客の通過ルートとして旅行会社のツアーに使われているのが内陸線だ。十和田湖や津軽方面から秋田、角館、田沢湖などへ向かうツアーなどによく出会う。

内陸線沿線でも、鷹巣や阿仁前田、阿仁合の花火大会には毎年臨時列車が夕方から夜に運転されている。大曲の花火の日も、沿線からの見物客輸送で賑わう。

< 秋 >

東北には、2つの秋がある。ひとつは、稲穂が黄金色に色づく「実りの秋」。9月上旬から10月上旬にかけて、澄んだ青空の下で、農作業が続く。このころの山は、「キノコの秋」。東北の山を代表するのは、やはりブナハリタケだ。地元で「ぶなかのか」と呼ばれているこのキノコは、クリーム色の肉と独特の香りが特徴。ブナ林の秋の恵みである。

田んぼが静かになると、山の紅葉が始まる。森吉山のブナ林は10月上旬から、内陸線の沿線は10月中旬からが紅葉シーズンだ。11月上旬にかけて、列車はたくさんの観光客で賑わう。内陸線では、14両の車両を総動員してこの時期の輸送を行っている。

紅葉シーズンは、昼間の列車は展望のよいスポットで徐行運転を行い、景色をゆっくりと鑑賞させてくれる。一番のスポットは比立内―奥阿仁間の「比立内鉄橋」、そして萱草―笑内間の「萱草鉄橋」だ。

東北の山の紅葉は、とても鮮やかだ。東京近郊よりも時期が1ヶ月近く早いというだけではない。夏から秋への気温の変化、そしてカエデやナナカマド、カツラなど、色鮮やかに染まる木が多いことが、秋を引き立てているといえるだろう。間もなく訪れる厳しい冬の前に、山は最後の輝きを見せてくれるのだ。

< 冬 >

   

北国の雪は、11月のうちにやってくる。まだ残る木々の紅い葉の上に、真っ白な淡雪が帽子のように被さるのが初雪だ。そして、何度か降ってはとける雪が来たあと、12月半ばには根雪となる。

内陸線は、秋田県でも一番の豪雪地帯を走っている。平野部の鷹巣や角館でも、積雪は1mを越えることもめずらしくない。起点から終点まで、ずっと深い雪の中を走る鉄道は、実はとても希少価値なのだ。

例年、一番積雪が多いのは、十二段トンネルを挟んだ、比立内から上桧木内にかけてで、2mを越えることもある。駅のホームは地元の人たちの力で除雪されているが、豪雪の年は雪の壁の間を列車が走る。

雪国の鉄道と言うと、列車の運休を心配するのだが、内陸線は大雪での運休がほとんどないといってよい。電車ではなくディーゼルカーだということ、雪対策がしっかりしていることが、冬の安全運行をもたらしている。海岸部を走るJR羽越本線や五能線が強風や高波によって運休しているときも、内陸線は通常運行されている、というケースが多い。

降り続く雪で二条のレールが埋まり、雪原のようになっていても、内陸線の列車は雪煙を上げて走る。運転席の横に立ってその様子を見ている旅行客が、驚きの声を上げるのは、こんなときだ。

雪景色の中を走る列車の中で雪見酒、と考える人たちにとって、内陸線は最高の舞台。